最近、リフォームや修繕を頼む手段が増えました。
暮らしのマーケット、ジモティー、ミツモア、SNSの個人業者、ホームセンターの提携業者。
昔より、ずっと選択肢が広がっています。
実際、簡単な作業なら、それで十分なケースもあります。
工務店に頼むより、安く・早く・気軽にできる仕事もある。
ただ一方で、「最初は個人業者に頼んだけれど、結局うちに相談が来た」というケースも、札幌で工務店をやっていると毎月のように起きます。
そしてもう一つ、よく聞かれる質問があります。
「工務店の見積に出てくる『一般管理費』って何ですか?」
個人業者の見積には無い項目だから、当然の疑問です。
何が違うのか。どう使い分けるのか。そして「一般管理費」の正体は何なのか。
工事部長として現場をやってきた立場から、正直に整理してみます。
そもそも「リフォーム」「修繕」と一括りにしない方がいい
まず最初に整理したいのは、「リフォーム」「修繕」と一言で言っても、中身は全然違うということです。
- A. 単発・限定的な作業(網戸交換、エアコン取付、軽微な補修)
- B. 複数の専門が絡む工事(水回り、外壁、屋根、断熱改修)
- C. 原因が分からない不具合(雨漏り、漏水、隙間風、結露)
- D. 古い家・寒冷地仕様の家(築30年以上、増築履歴あり、無落雪屋根など)
結論から言うと、Aは個人業者・マッチングサイトで十分。
B〜Dは工務店向きです。
ここを最初に分けておくと、業者選びで失敗しません。
個人業者・マッチングサイトが向いているケース
正直に書きます。
うちが対応するより、個人業者やマッチングサイトの方が向いている工事もあります。
【向いているケース】
- 工事内容が明確で、追加要素が出ない
- 専門が1つで完結する(電気だけ、水道だけ、など)
- 価格を最優先したい
- 工事範囲が小さく、責任問題が起きにくい
【具体例】
- エアコンの取付
- 網戸の張替え
- 簡単なクロス補修
- 蛇口の交換
- 棚の取付
これくらいなら、わざわざ工務店を通す必要はありません。
個人業者に直接頼んだ方が、安く・早く済みます。
工務店に頼んだ方がいいケース
では、どういう工事が工務店向きなのか。
5つに分けて、現場目線で書きます。
1. 原因が分からない不具合
「雨漏りで水道屋を呼んだけど止まらない」
「板金屋を呼んだけど直らない」
このパターンは、原因が複数の領域にまたがっているケースが多いです。
北海道で典型的なのは、
- 雨漏りに見えるけど実は結露
- 屋根の問題に見えるけど壁からの浸水
- 配管漏れに見えるけど凍結融解の繰り返し
- 床のきしみに見えるけど基礎の問題
「原因を特定する」こと自体が専門技術です。
複数の領域を横断して見られる人間が必要になります。
2. 複数の専門が絡む工事
水回りリフォームを例にします。
工事に必要な業者は、
- 解体屋
- 大工
- 配管屋
- 電気屋
- 内装屋
- 設備屋
これだけ絡みます。
施主が個別に頼んだ場合、
- どの順番で来てもらうかを自分で決める
- 各業者の空き状況を調整する
- 前の業者の作業が終わっていないと次が来られない
- どこかで問題が起きたとき「うちじゃない」の応酬
これを全部、施主側でやることになります。
工務店の本業は、実はここです。
施工そのものより、この調整。
バラバラの専門工事を、現実世界で破綻なく成立させること。
これが工務店の中核機能です。
3. 築年数が古い・寒冷地仕様の家
北海道・札幌の住宅は、本州と作りが違います。
- 無落雪屋根、雪庇、屋根融雪
- 凍結防止配管、不凍栓
- 高断熱仕様、付加断熱、二重サッシ
- 雪荷重を前提とした構造
築30年・40年の住宅は、当時の地域仕様で建っています。
この前提を知らない業者が触ると、必ず壊します。
例えば、
- 無落雪屋根の構造を知らない業者が外壁を触ると、排水経路が崩れる
- 凍結防止帯の配線を知らずに切る
- 寒冷地仕様の断熱を本州仕様で復旧する
これは資格では測れない、地域経験そのものです。
4. 責任の窓口を1つにしたい
工事が終わった後、何かあった時。
【個別発注の場合】
- 誰の責任か分からない
- 各業者に連絡する必要がある
- 「うちじゃない」と言われる可能性
- 保険対応も自分でやる
【工務店経由の場合】
- 窓口は1つ
- 原因特定からやる
- アフター対応もある
- 保険対応もサポート
特に北海道で大事なのは、冬季の緊急対応です。
夜中に凍結破裂したとき、マッチングサイトでは間に合いません。
5. 保険・行政・近隣対応が絡む工事
火災保険を使った雪害修繕、行政申請が必要な改修、近隣立会いが必要な工事。
これらは個人業者では対応できないことが多いです。
- 保険会社との折衝
- 写真の撮り方、見積の書き方
- 行政への申請書類
- 近隣説明、騒音対応
事務処理と現場の両方ができる組織じゃないと回りません。
で、「一般管理費」って何ですか?
ここまで読んで、
「個人業者と工務店の違いは分かった。
でも、なぜ工務店の見積には『一般管理費』が入っているのか?」
と思った方もいるはずです。
よく聞かれる質問なので、ここで答えておきます。
一般管理費とは、何か
一言で言うと、
「工事そのものには直接かからないけれど、会社として工事を成立させるために必要な費用」
のことです。
工事の見積書は、ふつうこういう構造になっていることが多いと思います。
【見積書の構造】 ┌─────────────────┐ │ 直接工事費 │ ← 材料・職人・現場経費 ├─────────────────┤ │ 現場管理費 │ ← 現場監督・安全対策など ├─────────────────┤ │ 一般管理費 │ ← ★これ └─────────────────┘
下に行くほど「目に見えない費用」になります。
でも、これが無いと工事は成立しません。
一般管理費に含まれているもの
会社によって内訳は違いますが、うち(北嶺建設)の場合、おおむねこういう費用です。
- 事務所の家賃・光熱費
- 事務員の人件費・経理処理
- 各種保険料
- 労災保険(職人が怪我した時のための)
- 賠償責任保険(万が一施主に損害が出た時のための)
- 自動車保険、建設業の各種保険
- 営業車・社用車の維持費
- 通信費(電話・ネット・現場連絡)
- 業界団体・建設業許可の維持費用
- 見積作成、現地調査、打合せの時間
- アフター対応・緊急出動の待機コスト
- 会社としての利益(次の工事や設備への投資原資)
これを工事1件ずつに按分して、「一般管理費」として乗せています。
なぜ個人業者の見積には無いのか
個人業者の見積に「一般管理費」が無いのは、ぼったくっていないからではなく、
「そもそも会社運営のコストがほとんどかかっていない」からです。
個人業者の多くは、
- 事務所を持っていない(自宅)
- 事務員がいない(本人と家族)
- 保険に入っていないことも多い
- 建設業許可を取っていない(500万円未満の工事は不要)
- 緊急対応の待機体制が無い
だから安く出せます。
これは悪いことではありません。
小さな工事だけ受けるなら、それで成立します。
ただ、
- 工事中に職人が怪我したら?
- 工事中に施主の家財を壊したら?
- 引き渡し後に不具合が出たら?
- 数年後にアフターを頼みたくなったら?
- 冬の深夜に凍結破裂したら?
このとき、対応できる体制を持っているかどうか。
ここに、一般管理費を払う意味があります。
一般管理費は「中抜き」ではなく「会社で受ける」コスト
誤解されやすいのですが、一般管理費は
- 中抜きでも
- ぼったくりでも
- 余計な費用でもありません
会社として工事を受ける以上、絶対にかかる費用を、
透明に見積に書いているだけです。
むしろ、この項目を書かずに直接工事費に紛れ込ませている会社の方が、内訳としては不透明です。
うちは、ここを正直に分けて書いています。
納得していただいた上で、頼んでもらいたいからです。
マッチングサイトの「見えないリスク」も知っておいた方がいい
これは個人業者を悪く言うのではなく、構造上こうなりやすいという事実として書きます。
- レビュー評価は工事の質を保証しない(簡単な仕事の評価が多い)
- アフターが続かない場合がある(個人事業主の引退・廃業)
- 工事範囲が限定的(追加対応に弱い)
- 緊急時に連絡が取れないことがある
- 保険・補償の仕組みが会社と違う
判断材料として、頭に入れておいてください。
では、どう使い分ければいいか
ざっくりまとめると、こうなります。
【マッチングサイト・個人業者が向くケース】
- 工事が単発で、追加要素が出ない
- 専門が1つで済む
- 価格優先、緊急性なし
【工務店が向くケース】
- 複数の専門が絡む
- 原因が分からない不具合
- 古い家、寒冷地仕様の家
- 保険・行政が絡む
- 冬季の緊急対応が必要かもしれない
- 1つの窓口でアフターまで通したい
「うちに頼んでください」と言いたいわけではありません。
むしろ、小さな工事ならマッチングサイトで十分です。
ただ、「これは個人業者で大丈夫か?」と迷ったときは、相談ベースで聞いてもらえれば、正直に答えます。
うちでやる必要がない工事なら、そう伝えます。
札幌・清田で工務店をやっている立場から
北海道は、本州と比べて「家を維持する」こと自体が専門技術になりやすい地域です。
雪、凍結、断熱、冬の緊急対応。
本州の業者が来てもうまくいかない理由は、ここにあります。
うちは清田区で約29年、地域の住宅を見てきました。
新築よりも、修繕・改修・冬の対応の方が多い会社です。
「これ、頼んでいいか分からない」
そんな小さな相談から、お気軽にどうぞ。
見積を出すときは、一般管理費の中身も含めて、聞かれれば全部説明します。
納得して頼んでもらえる関係を、大事にしています。
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